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『モーターサイクル・ダイアリーズ』エルネスト・チェ・ゲバラ

モーターサイクル・ダイアリーズ (角川文庫)
雇用問題ばかりだった正月の討論番組で竹中平蔵氏が、「同一労働同一賃金」の改革は財界の反対にあってできなかったんですよと言い訳していた。国の将来のために正直であるなら、彼はもっと派遣労働の規制緩和で強気で取引すべきだっただろうが、少なくともここまで社会問題になるとは当時も考えていなかったはずだ。正規社員の待遇が恵まれすぎ(のせいで社会全体の幸福や発展が損なわれている)と後だしジャンケンしていたが。
派遣問題はひとことでいって雇用調整だったのではないか。社員は家族だといってオイルショックでも一人も首にしなかったといわれる当時の松下電器のような会社はもうどこにもないが、まだまだ企業には正社員の待遇を守ることに人材流出を防ぐという利益がある。おそらくそれももう時間の問題だろう。なぜならその理由は、競争相手企業がみんなそうしているからという理由でしかないからである。今年から深まっていく不況の危機の中を、生き残っていく企業がそれとは別の戦略をとり始めるのなら、どの企業もそれにならっていくだろう。生き残るために。
それに上場企業の場合、正社員の人件コストは固定費なので決算がやばくなっても動かせないが、派遣や外注契約は変動費に計上されるので、赤黒の調整がきくというメリットがある。
トヨタが昨年11月に発表していた6000億の黒の中間決算が12月には1500億の年度赤に下方修正されたのは驚いたが、それでも大量派遣切りを問題にされるトヨタが、社員全員がニートになって家でぶらぶらしても5年は給料を出し続ける内部留保があるという話が本当なのなら、明らかに社会全体の利益をねじまげる異常なことだし、国際競争力を維持するためとはいえ、それを後押しした政策もやりすぎだった。
確かなのは、たとえ内需企業であっても政官財のトライアングルを利用して生き残ることはできなくなり、政策の修正を目ざとく取り込み、努力した人が報われるのだというアナウンスを上手く使って有能な人材を集めて業績を上げていく企業が生き残るという点である。

そもそも、「正規」だ「非正規」だと耳にタコができるぐらい目と耳にした正月のテレビとネットだったが、そんな言葉が流通しているのは日本だけだ。正しく翻訳できる外国語の単語だって存在しないという。一般的なのはフルタイムかパートタイムかだけで、その待遇の違いをめぐる議論を正規か非正規かという、まるで本物の従業員かまがいものの従業員かのような語弊のある単語で済ましている時点で生産的でない。なんだか、ゲバラの時代の階級闘争で革命的労働者とはって叫んでいた議論を、日本人が一般的に勤勉だからこそ維持している競争力のおかげで、その箱の中でままごとでやっているように聞こえてきてしまう。本当に今生死の境にいる人には申し訳けできないけど。日本人がヘルシーな環境で勤勉であり続けるためにはっていう話に、正規とか非正規っていう単語が日本人らしくないというか、そぐわない気がする。

単語はともかく、ゲバラが南米諸国の貧困に深刻な衝撃を受け、闘う相手としたのは資本主義とりわけ、貧しい人たちの利益をかすめ取っていくアメリカ資本と、根も葉もない共産主義の脅威をでっちあげて人の国を中からかきまわすCIAだ。(イラク戦争で大量破壊兵器をでっちあげていたCIAとなんら変わらない)そんな人生の転換点の一つとなったグァテマラ事件のことは『CIA秘録』にも、アメリカのおそまつのひとつとして載っていた。
キューバ革命後のゲバラは、国民の利益に背いて米ソ大国同士の競争論理にキューバが振り回されるのに愛想をつかして再び南米諸国のゲリラ戦争に加わっていくのだが、この正直さが竹中平蔵氏の後だしジャンケンとの違いである。

そんなゲバラが革命家になる前の普通にいい人柄の青年ぶりはなんだかネラーと重なる部分がある。今年はキューバの革命50周年記念でメディアでも取り上げられるだろうから蟹工船くらいには話題になるかもしれない。
モーターサイクル・ダイアリーとはいっても、旅の始めの方でバイクは廃車になってしまい、あとはヒッチハイクだ。密航で輸送船のメロンの倉庫に潜り込んで、メロンを盗み食いしたくだりが面白かった。

…がつがつとメロンを食べていた。僕らは親切な水兵たちのことを話題にしていたが、そのうちの一人の協力で船に乗り込み、こんなに安全な場所に隠れることができたのだ。そんなとき、腹立たしげな声が聞こえて、それからとても大きく見えた口ひげがどこからともなく現われて、僕らはびっくり仰天してしまった。完璧につるつるになったメロンの皮の長い列が、穏やかな海上を一列に並んで漂っていた。後になってから、水夫が言った。「おれがあいつの目をくらましてやることだってできたんだけどよ、兄さんたちよ、なんせメロンを見ちまって、すぐさま嗅ぎまわり始めたんでよ。あれじゃどこのどいつだって助からんよ。船長は酒癖が悪くってねえ」それから、(恥ずかしそうに)「兄さんたち、あんなにメロンを食わなくてもよかったんじゃねえの」といった。


ほかには、ペルーで牛を運ぶトラックに乗せてもらっていたとき。

おがくずの層でできた支えの基盤を失い、しかもトラックの揺れに耐えながら同じ姿勢でいるのにつかれてきた牛たちがしょっちゅう倒れてしまうので、ほかの牛に踏みつけられて死んでしまわないように、何が何でもそれを引っ張り起こさねばならなかったからだ。
あるときアルベルトが、一頭の牛の角が他の牛の目を傷つけていることに気づいて、ちょうどそのときそちら側にいたインディオの子供に知らせた。この民族の精神の全てを込めて肩をすくめながら、子どもは言った。「これからどんな見るものがあるってんだい」。そして落ち着き払って、紐を結び続けた。それは中断された時に専念していた仕事だった。

インディオの民度の低さではなくて、子どもにこう言わせてしまう貧困のことをゲバラはいっている。こんなことを体験しながら南米を縦断していけば、そりゃ、石油や鉱物といった天然資源を採掘していくアメリカ資本と、その資本を使って(まだ理想が見えていた頃の)社会主義の邪魔ばかりするCIAが憎らしくもなってくる。

1/8 追記:
池田信夫氏のblogエントリ格差の正体でOECDの報告書の日本語版が紹介されている。当然のように「正規」「非正規」という日本的雇用語で翻訳されているが、08/12/18に掲載されている英語の報告では以下ように説明されている。
Japan could do more to help young people find stable jobs

Young people in Japan are finding it increasingly hard to get permanent jobs and the Japanese authorities should expand vocational training schemes and increase social security coverage for young non-regular workers in order to help them.

本文(赤字筆者)

In 2007, around one in three young workers aged 15-24, excluding students, were in so-called non-regular work, such as temporary or part-time jobs. These jobs provide low income and social insurance coverage and little potential for people to develop their skills and careers. It is also difficult to move from temporary into permanent work, leaving many young people trapped in precarious jobs.

To help young people in temporary or part-time jobs, known as freeters

non-regular workという単語だけでは日本の非正規雇用の状況の説明にはならない。
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笹部 政宏
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