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本 - 『マリス博士の奇想天外な人生』

コールマンの折りたたみ椅子を買ってBSMのキャリアにくくりつけ、新しいキャリアバッグもつけて用意万端の週末だが、今日も明日も雨。自転車ブログ村サイトからのアクセスがいつもより多いのも雨のせい?

『生物と無生物のあいだ』の著者の翻訳本。巻末に対談もある。ノーベル賞サーファー博士の自伝、この本こそ海辺で読みたかった。カラマーゾフじゃなしに。


大学生時代に友達同士でインドに安旅行にいった。その時の一番強烈な体験は、バラナシのホテルに泊まっていたときでのこと。通りに面したベランダに居心地のいいテーブルがあって、そこで皆でダベったりして気のいい16才の若い従業員と友達になっていた。その日の夜、その従業員がドアをノックしてきて、他の日本人の宿泊客が様子がおかしいから見てくれという。
その部屋に入ってみると、カップルがいて笑ってヘラヘラしていた。男は坊主頭で、名前を聞くとダイドーだといった。女の名前は忘れたが、すぐにベジタリアンの差別について何やら語り始めたのを覚えている。インドは酒は禁止されているのにまずいなと思ったが、酒のボトルらしきものは見当たらなかった。かわりに、ライチとカボスを足して割ったような柑橘系のピンポン玉くらいの果物が幾つか、包丁で二つに切った後があった。

話かけてもべろんべろんで会話にならないし、一ところにじっとしていないので目が離せない。トイレにいくといえば、男は入口のドアに向かってしようとしたり、女は入って出てこないと思ったらTシャツを脱いで上半身裸で手洗いで洗濯を始めていた。
それだけならまだしも、彼らの五感で感じるものは全て幻のようだった。何もない床でこぼれ散った何かをかき集める動作をして食べようとしたり、サソリだかイモリだかがベッドのあちこちを這いずりまわっているだとかを楽しそうに伝えてきたり。これはダメだというのを目でホテルの人に合図してから、手に取れるものはすべて棚に隠したりして、とにかくベッドに座らせておとなしくさせていた。
そうこうしていると、インド人の医者がやってきて、ホテルの支配人らしき人と真剣な顔で何やら相談を始めた。どうやら、あのタトゥーラとか何とかいう果実がLSDよりも強力な作用を持つらしく、二人はそれを直接しゃぶってしまったからもうどうしようもないのだという。一時間おきに飲ませるようにといって利尿剤を処方して帰ってしまった。

それから朝まで、ホテルの従業員が1時間おきに持ってくる利尿剤を飲ませながら、幻覚や幻聴、意味不明な言動のおつきあいをした。いいかげんこっちも疲れて、「ホーリーネームだか何だか知らないけどダイドーさん、日本に髪の毛忘れてるみたいだからとりあえず取りに帰れよ」とイヤミをいうと、それは幻聴には聞こえなかったのか、おれは日本で~お前も明日にだって死ぬんだ~とハイテンションになった。僕は笑ってツルツル頭をなでなでして「おーよしよし」とやってやったら、キョトンとしてた。そこまでしてもプッツンしないのは酒より恐い。もうくたくたになって彼らの横で眠った。今思えば、髪の毛を食われるか便器がわりにされるか、何をされるか分からないこわいことをしたが、その時は目を離すことができなかったし、なんだか情も少し移って気を許していた。

僕がガンジャ程度ならインドでやってみたかどうかは読む人のご想像にまかせるが、脳の働きが壊れるというのは、機械のそれと変わらないなというのが結論だ。動画や音声が無限にループ再生されてしまったり、キャブをいじってバイクのスロットルが全開から戻らなくなったり。手に負えない未知なるものとの遭遇の一瞬を感じさせるものではあるが、所詮故障は故障にすぎない。
だから、ドラッグをやって感じるかりそめの幸福感だったり全能感というものは、その場だけのものでしかなく、変な夢をみたというのと何も変わらない。

バイクの事故で気絶して救急車で集中治療室に運ばれ、丸一昼夜意識が戻らなかったときも変わった気持になったことがあった。まず時間の感覚がなかった。目を覚ます度に、おれここで何してんのと家族に何十回も聞いていたらしい。窓の外にある木と会話ができる気がして、それが不自然なことという自覚もなく話しかけたりしていた。夕暮れ時の窓の外の明るさと僕の感情が直結していて、黄昏気分とそれとが一体化しているのもごくあたりまえにハッピーなことのように感じた。歩いてトイレにいくにも、エスカレーターで浮遊して動いているような感じだった。
しかし、半日、一日と時間が過ぎるほどに、僕の頭はみるみる時間の感覚を取り戻し、窓の外の世界も外部の存在になっていった。翌朝目が覚めたときには、頭は元通りのクリアな状態に戻った。

ノーベル賞受賞者のマリス博士は、LSDの経験者であることを公開しながら、LSDがもたらすものに対する一定の評価は変えていないように読めた。テレパシーの体験や、一人で命を落としそうになったときに幽体離脱ができる女性に助けられ、後からその説明をされてせまられた話。アライグマのような生き物に「こんばんは、博士」と話しかけらた瞬間から数時間の記憶が全くない話、トンデモ体験のオンパレードだ。
それも、科学者としてのマリス博士はとても正直者で、未知なるものは全て科学の対象なのだからだろう。一方で、金や権威といった俗っぽいことで科学を捻じ曲げる科学者を痛烈に批判する。健康、環境やエイズの問題を食い物にでっちあげて人々を不安症におとしいれ、自分はBMWに乗って郊外の邸宅に住む人たちをこきおろす。

僕が女だったら、最後の章を読んで心がときめいているはず。さすがモテモテマリス博士。

p310「地球の未来は、人間の思惑とは無関係に展開していくのだ」(と低くてあついため息をもらし)、「人間は~」「地球は~」「人類が~」と7,8回続けて(熱い眼差しを向けて)語った後、こういう。

p314「人類など巨大な岩石の表面に薄く生えているコケのようなものだ。人類は思考し、言葉を操る特別な生物で、その数を増加させている。しかしこの地球の運行をピクリとも変化させることはできない。地球のごく表層を占有し、ひっかいて自分のものにしたつもりでいるにすぎない。」

p315「人間ができることと言えば、現在こうして生きていられることを幸運と感じ、地球上で生起している数限りない事象を前にして謙虚たること、そういった思いとともに缶ビールを空けることぐらいである。」


キャー!ステキ!
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笹部 政宏
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